「……んぅっ」
「目、覚めた?」

 がごしごしと目を擦り、身を起こした。先程に抱きしめられ、いつの間にか兄の腕の中。記憶がないのは、気絶していたからだろう。

「……?」

 純に抱かれたまま、は辺りを見回す。苛立った様子のと、電話中のと対峙している男子が一人と、人払いをしている男子が一人。彼は関西弁で愛想よく集まってきそうな生徒を散らしていた。それから、その場を去ろうとしていた見覚えのある二人の男子。

「お、起きたか? 多分跡部がなんとかしてくれっから、ちゃんと家に帰れるぞ。良かったな」
「おうち……?」
「俺と樺地は練習に戻るから、また会うようなことがあったらそん時は宜しくな! じゃ、行くぞ樺地」
「ウス」

 本心ではもう会うこともないと思っているのだろう。赤い髪の男子は、名乗ることもなくに背を向けた。それがには珍しかった。彼女の周りには、常に彼女の背後になる紫凪の家を見ている人間しかいなかった。だから、に少しでも取り入ろうと、しつこいくらいに名乗り施しをするのが普通の反応だった。そしてそれを、は良く思ってはいなかった。

「やだなあ……おうち……」

 ぽつりと呟いた言葉に、純はを抱きしめる腕を強める。守ると決めたから。あの家から、を守ると。紫凪純はその為に生きている。

「ごめん、ちょっと分かるように説明してくれねえか? 碧、俺には分からない。信じられない。だって、さっきまで、」

 が少し大きな声を出し、三人はに視線を集めた。

「だ、だって、それは、漫画の話だろう?」

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