「はい、写真あとで僕にも送ってよ。これ、アドレス」

ひとつ下の学年の女生徒の頭を撫でながら、は走り書きのメモを彼女に握らせる。
相手は顔を真っ赤にして、首を縦に振っていた。
可愛いな、と思う。これだから女の子を喜ばせるのはやめられないのだ。

「あ……」

ひらひらと手を振るの瞳は、嬉しそうに友達のところに戻っていく彼女から視界の端にピントを合わせていく。
きっちり彼女が去るのを見送ってから、はそちらへと足を向けた。

見慣れた二人組。
彼はに気付くと、あからさまに嫌そうな顔をする。失礼な奴だ、こんなにも美しい僕が顔を見せてやったのに。素直にそう思いながら、はとびきりの笑顔をわざと浮かべた。

「景吾、崇弘、休憩かな?」
「あっちに行ってろ、グリーンサラダ」
「……崇弘、景吾疲れてない?」
「ウス」

自分をあしらう暴言のキレが悪い。自分だけが分かる跡部の変化に、は溜息を吐いた。

ちゃんと、何かあった、のかな?」
「……」
「うわすごい眼光。うん、当たりだね。喧嘩? 泣かしちゃったりした?」
「走ってどっかに行っただけだ、じきに戻る」
「ふーん、根拠は?」
は、俺のーー」
「違うね、君のじゃない」

の笑顔から温度が消える。
だがそれも一瞬で、2人の間に割って入った樺地が首を横に振ると、のそれはすぐにいつもの笑みに戻っていた。

「まあいいや」

遠くから、2人を呼ぶ女生徒の声がする。
はひらひらと手を振りながら、視線を跡部に投げずに言葉を続けた。

「僕は僕なりに、彼女たちと関わるつもり」
「……勝手にしろ。だが、間違っても手だけは出すんじゃねえぞ」
「うーん、うん。善処するよ」
「確約を求める」
「景吾が女の子ならねえ、約束するんだけどねえ」
さんは……昔から、こう、ですから」
「三つ子の魂百までだな。は、ガキの頃から変わらねえな……」

微かに笑う跡部に、はすっと立ち上がる。

「本当に変わらないと、思った?」
?」
「変わってないのは、景吾だけだよ」

そのまま樺地の胸を軽く叩いて、その間にもの瞳は跡部を映すことはなく。

「崇弘、甘やかしすぎ」
「……すみません」
「その優しすぎるところ、大好きだよ」

別れの言葉はなく。
再会の約束もなく。
は登場と同じく勝手気ままに去っていく。
残された跡部は、溜息をひとつ吐いて樺地に苦笑いをしてみせた。

「そろそろ、皆さん……戻ります」
「……ああ」

不器用な話題の変え方に、彼は本当に優しいのだと思う。
樺地が居て、が居て、だからこそ足りないのだ。これはそれだけの話、なのだ。
跡部景吾はゆっくりと瞬きをすると、立ち上がって樺地に頷いた。

「俺様自ら出迎えてやるとするか。なあ、樺地?」
「ウス」


To be continued.

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