空は快晴。服装は学生用には少し上等すぎる学校指定のジャージ。
始まった自由行動に、幼い彼女は興奮したという様子で声をあげた。

「あすれちっく!」

覚束ない言葉に、その様子を見ていた面々はくすくすと笑う。
顔振りは慣れたようなテニス部のレギュラーたち。

「あすれちっく……」
「純までイントネーションがおかしくなってるね〜」
「じろ、せんぱい! あすれちっく、なに!」
「純、純、落ち着いて」
「ちょたろ!」

普段は見た目に反して大人びた純でさえ、興奮気味である。
無理もない。遊具と自然に囲まれた、巨大なアスレチック施設など、生まれて初めて目にしたのだから。

「こいつら、遠足とか自体あんまり経験ないんすよ。だから、大人数で遊ぶ授業とか、理解が追い付いてなくて興奮してるんです」
「経験ないって……どんな学校に通ってたんだよ、おまえら」

呆れたように双子の頭を撫でながら、宍戸はに尋ねる。
その質問に、は苦笑いを浮かべた。

「学校っていうか、家が厳しかったみたいで……」
「紫凪の子たるもの、まずは茶の道! それこそ娯楽! って言われてたからねえ」

宍戸に撫でられながら、純が呟く。
その言葉を聴いた は唇を尖らせたが、すぐにじたばたと暴れて宍戸の手から逃れて跳ねる。

「お茶はすき! でも、そればっかはつまんないよ!」
「まあ、家元ってのもあって厳しくしてたのはあったかもしれないけどね。俺は と一緒に習えたから、まだ楽しかったけど」

はしゃぐ を捕まえて、は宍戸に撫でまわされた の髪を整えてやる。
解けかけたリボンをきゅっと結んだところで、滝が「んー」と意味深な声を漏らした。

「二人は茶道の家元の子だってこと?」
「っ……」

滝の言葉に、さっと青ざめたのは
流石の純も気付いたのか言い逃れようと口を開くが、それより滝が核心を突く方が早かった。

「紫凪って家元、俺は聞いたことないんだけど……」

視線が集まる。
四人は言葉を探すが、説明よりも先にの足は動いていた。

「あっ、逃げたぞ!」

岳人が叫ぶ。
それと同時に、残った三人も無意識に駆けだしていた。
逃げられれば追ってしまうというもの。それ以上に、レギュラーたちからしてみれば親睦会の気持ちもあったのである。
追いかけるのは、気になる背中。遊具の間を、彼らもまた駆けだした。
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