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真田弦一郎は慣れたように部室の扉を開くと、眩しそうに目を細めた。 それが外に出た時ならばまだ分かる。だが、真田は今部室の中に入ろうとしたところだった。 何が眩しかったのか。聞かれても、少し返答には困る。きっと、共感もしてもらえないだろう。 そこには、満面の笑顔で真田を迎える金髪の少女が仁王立ちしていたのだ。 「授業お疲れ様、真田!」 「和水……」 「って呼んでいいってば。和水は二人居るでしょ!」 「む……だから、あちらを濯と……」 「なんでさ!」 唇を尖らせる彼女は、五月の半ばに転入してきた二年生だった。 時期も変わっているが、その兄だけでなく友人二人を引き連れて転入してきたことであまりに印象に残っている。 何より、彼女はどうにも真田のことを知っていたらしく、出会って早々にすきだと面と向かって伝えてきたことが真田にとってあまりに衝撃的な出来事として記憶されている。 好きだと言われて悪い気持ちになることはない。 だが、はいじゃあ付き合いましょうとなることもないだろう。 それに、彼女の「好き」に真田はどうにも引っかかることがあった。 「まあいいや。ゆっきー、検査の結果良いといいねえ」 「……検査?」 「え?」 の言葉に真田は微かに動揺する。だが、その反応に対していっそう彼女は動揺を見せていた。 「幸村は、今日から手術に向けて入院だが……」 「……そう、なの? だって、こないだ、あたしに検査入院って」 「恐らく、転校したてのおまえに気を遣ったのだろう」 「そ……っか。そっかあ。少し、変わると思ったのになあ」 「和水?」 は部室のパイプ椅子にかたんと座ると、宙を見つめてそれからその瞳をゆっくりと閉じた。 その仕草があまりに綺麗で、真田は着替えるために置こうとした鞄を床にどさりと落としてしまう。だが彼女はその音に気を取られることはない。 「今度、お見舞いに行こう。みんなで、行こう」 「――ああ」 「あたし、真田が好きだよ」 「だっ、だからそういうことは!」 「軽い気持ちじゃないハズなんだけどなあ。好きだからさ、あたし、立海を勝たせたいんだ」 「当然だ、我々は勝つ。そこに油断もない」 「そうだね。そうだ。はー、やっぱり好きだな!」 「っ……」 「ちゃんと好き。あたしは、真田が、好き」 うんうんと頷き、恥ずかしい台詞を吐いたは笑顔のままひらひらと手を振った。 それじゃあ、いくね。そう言って、彼女は部室を飛び出していく。 「あいつは……」 一人きりになった部室で、真田は呟く。 「あいつは眩しいな、幸村……」 back |