「樺地くん、ドリンクのお届けでっす」
「ウス」
「どうぞー!」
「ありがとう……ございます……」
「えへへ」

二、三本のドリンクボトルを抱えて、はレギュラーたちと部室前を行き来する。
一度に沢山を持てないは、それでも持ち前の元気さで単純な作業をこなしていた。
難しいことはに任せればいい。は出来ることを、頑張るだけだ。それが、二人にとっては一番上手いやり方だった。

ちゃん、運び終わったよ!」
「お疲れ。疲れてないか?」
「うん、大丈夫!」
「じゃあ、次はタオルを畳む作業だな。四角に折って、畳んでくれ」
「お任せ!」

の指示を受け、は部室へと駆けて行く。
三年部員たちからは既に随分人気なようで、走りながらは手を振る部員たちに元気に手を振りかえしていた。

「さて、と」

はそれまで作っていたドリンクを片付け、ボールの山になった籠を持ち上げる。
力仕事はの仕事だ。

「癒月、大丈夫か?」
「ん? あー、えっと、宍戸」
「先輩、だろ。まあいいや、あんま無理すんなよ。それ重いだろ、どっかにカート余ってなかったかな」
「いいよ、すぐそこまでだから」
「そうか。じゃあ、もう一個は俺が持って行ってやるよ」
「む……まあ、じゃあ、頼む」

自分が年上の男性に嫌悪感を抱かないのは、多分濯や碧のおかげだとは思う。
いや、父親たちを恨むのもおかしな話だ。だって、全ては自分が生まれてしまったから悪いのだから。
誰よりも健全に見えるの心に根付いた不健全な自己罰は、もう十数年物である。だから、がどれ程を許そうと、が何もなかったかのように接しようと、と楽しく言葉を交わそうと、それは簡単には揺るがない。

「もう夏だな、暑い」
「そんなうっとうしい髪してるからだろ」
「お前は随分さっぱりした髪型だもんな」
「宍戸も切ればいい。楽だぞ、短いと」
「んーでもなあ。願掛けっていうか、なんかもうここまできたら切るに切れないっていうか」
「そんなもんか」
「そんなもん。お前も、そのハイネック暑くないか? 日焼けとか、気にするんだなー」
「あー、まあ、そんなとこ」

他愛もない会話だ。
長くもなく短くもない、コート脇の用具倉庫までを繋ぐ言葉でしかない。
だからそんな会話は、すぐに終わる。
扉を開いて、籠を片付けてしまえば、仕事も終わりだ。

「ごくろーさん」

突然、の頭を宍戸はぐしゃりと乱雑に撫でると、にっと笑顔を見せた。
は少しきょとんとしたが、すぐに不機嫌そうな顔で彼を睨む。

「悪ィ、悪ィ。なんか男の後輩みたいで、つい、な!」
「なんだよそれ」

正直、頭を撫でられたのなんて初めてのことだ。
背の高いは、いつだって撫でる側だった。

「まあ、女子扱いされるのも変な感じだけどさ」
「へえ。なんか、お前絡みやすいな!」
「女子に慣れてない典型的な男子か、あんた」
「先輩だっつってんだろ! ていうか、別に女子に慣れなくたって、そういうのは跡部とかに任せとけばいいんだよ!」
「ははっ、否定しないんだ!」

がけらけらと笑えば、宍戸は苦い笑みを浮かべる。
他愛もない会話だ。だが、悪くない。

「だー、もう! 行くぞ! まだ練習時間だ!」
「はいはい。あー、おかしい。あんた面白いな」
「楽しんだようで何よりだよ!」



To be continued.








 : →


back