「えっと、そっちは今神奈川で、ここは東京なんだよな? くっそ、都道府県の名前は同じなのに、なんでこう……純、どうする?」

 碧に告げられた現状に混乱しつつ、は純に思考を投げた。この四人で一番頭が良いのは、見た目の幼さに反し純なのだ。

「俺に聞く? えっと……俺は、が無事ならそれでいい!」

 面倒そうに答えた純の言葉に、と睨み合いを続けていた男子が目を見開いた。

「……おい」
「うん?」

 彼はを無視して、純に抱かれて木陰に座っているの視線の高さにしゃがむと、その瞳を覗いた。同じアイスブルーが、鏡のように互いを映す。そしてすぐに立ち上がると、彼はから携帯を奪い口を開いた。

「お前らの事情を説明しろ。事と次第によっては、可能な限り俺様が援助してやる」

 突然の台詞に、その場の誰もが唖然とする。唯一、電話の向こうの碧だけが彼の言葉を理解したようだった。
 そこから彼の対応はすさまじかった。碧との交渉が済んだのか、電話を切ると自らの携帯電話で何度か連絡をすると三時間後にはの手に見慣れない鍵が握られていた。

「ここから近い場所にある一軒家だ。好きに使って構わねえ」
「おい……ちょっと待て、全然展開が読めねえ!」

 あまりの勢いに飲まれていたが、やっと自分のペースを取り戻したのか彼の胸倉を掴んで怒りをぶつけた。当然である。突然、漫画の世界に飛ばされたと言われ、何故か見ず知らずの男が住居を提供してきた。それも、神奈川に居る友人の分も含め、二軒。その行動力云々以上に、彼の持つ権限がには計り知れなかった。同時に、その真意も不透明では怪しむより他ない。

「大体テメェは何者で、なんでアタシらにこんな、」
「勘違いするな。お前のためじゃねえ。そんな小せえガキ連れて、行く宛てもなさそうにしてりゃ放っておくわけにはいかねえだろ」

 の腕を軽く振りほどき、皺の寄ったジャージを整えながら彼は尚も冷ややかに言った。

「嘘かどうかなんざ、俺様の眼力があれば分かる。おい、行くぞ忍足!」

 それから、と彼は甘い笑みを浮かべる。でなければ、おそらく卒倒するその美しい笑みで、彼はどこか優しく名前を告げた。
 跡部景吾――そう名乗った彼は、手配した執事に全てを任せる旨を伝えると、四人に背を向けて去ってしまった。
 人払いを続けていた眼鏡の男子もひらひらとたちに手を振って踵を返す。そこに残ったのは、茫然とする四人と、の掌に収められたひとつの鍵だけだった。

To be continued.

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