部活で疲れた体を、ベッドに沈めた。
夏の終わりを肌で感じながら、一枚の毛布を頭から被る。多少息苦しくても、蔵ノ介はその中で寝返りをうった。
カコ、と重めのキーを押す。
携帯の光が彼の端正な顔を照らした。
『新着メール 1件』
静かな部屋の中に、携帯のプッシュ音だけが静かに響く。


「は、」


思わず意味のない言葉を漏らし、蔵ノ介は画面を凝視した。
一通のメール。それは、彼にとって愛おしくて仕方ない少女からの物。
それだけならば、彼はここまで動揺はしなかっただろう。
矢印キーを連打するが、画面が下降することはなかった。

白紙の、メール。
携帯に映る時刻は既に23時を過ぎている。悪戯をしてくる時間ではない。
間違えた、としても謝罪のメールが来ないのもおかしい。
蔵ノ介は暫くその画面を見つめ、俯せになって携帯を閉じた。


……」


携帯を再び開くと、素早く電話帳を開く。
その中から愛しいを見付だし、通話ボタンを押した。
彼の予想に反して、呼び出し音は三回も鳴った。


「……くら、の」
「アホ!」


小さな声の彼女に、多少声を張っての第一声。
がびくりとしたのが、はっきりと分かった。


「あんなん、俺やなかったら分からんやろ」


ごめん、消え入りそうな言葉が返る。


「謝んなや。ちゃうやろ、俺は──」


枕に顔を預け、唇を尖らして言った。


「ただ寂しいって、ちゃんと言ってほしいだけなんや」


迷惑とか、考えて欲しくない。
言えないなら、言葉に出来るまで待つから。傍で、手を繋いで待つから。
だから。


「俺は、一人よっ掛かったくらいじゃ潰れへんよ。安心しい、いつでも二本の腕で抱きしめたるさかい」
「ほんとう?」
「ん、俺に二言はあらへん」


小さくて、臆病なお姫様。
それを隠したくて背伸びをするから、壊れやすいことを、蔵ノ介は知っている。その脆さが、いっそう彼を引き寄せる。


「今日は眠れるまで話そうな、それやったら平気やろ」
「……うん」
「ほななあ、今日の部活でな──」





寝息を聞いて、電源ボタンを押した。
目を細めて、包帯を外した左手で画面をつつく。
カチカチと鳴った待受画面には、の泣き顔が映っていた。


「ええ顔しよるからに、俺の前でだけ泣けばええよ──なあ、?」





fin.
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