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「へぷちっ」 「なんや可愛えくしゃみ」 クスクスと笑う忍足に、は顔を赤く染めて唇を尖らせた。 けれども、冬の寒さから逃げようとが忍足に寄り添えば彼は更に表情を柔らかくする。 駅のホームで、二人は電車を待っていた。 「12月ですよ、忍足先輩」 「やんなぁ」 二人の背後のホームに、急行の電車が止まる。 二人の立つホームの電光掲示板は、準急の電車があと3分で来る事を示していた。 はマフラーに顔を埋め、スカートの中で足をもぞもぞと動かした。 「寒いん?」 忍足が眉を下げて顔を覗く。 「大丈夫ですよ」 が柔らかい笑みを浮かべたのは、彼が心配してくれた事が嬉しかったから。 目の前の忍足の眉間の皺が深くなり、一瞬開いた口が閉じられた。かと思えば、忍足はを胸に抱きしめる。 は顔を上げようともがくが、忍足はそれを許さなかった。 「……あかんよ?」 パッと手を放せば、が息を切らせて忍足を見上げた。 眉を寄せたまま、目を細めた忍足の表情が切ない。 「そんな顔、俺以外に見せたらあかんて……」 「せんぱ、」 開いた唇は、忍足によってすぐに塞がれた。 煩い位に心音が響いて、それでも未だ加速する。 ぬるりとした感触に、の目尻から涙が零れた。 「っばか、ですねぇ……」 「……」 「私は此処に居ますよ、先輩」 唇が離れた後に、今度はが忍足の顔を抱きしめた。 どうしようもなく好きで、だからどうしようもなく不安で。 そんな彼を心底愛しく想う。 「あー……先輩、見て下さい!雪です!」 「ほんまやねー」 ちらほらと舞う白い粉に、は目を輝かせた。 忍足は微笑みを返す。 「積もったら何か創りましょう!」 「せやね」 「それが溶けたら春にはお花を見るんです。夏にはスイカを食べて、秋には赤い葉っぱを見るんです」 興奮したようには忍足に語る。 ホームには電車が来るアナウンスが響いた。 「そしてまた冬が来て何かまた雪で創るんです。それを何度も何度もするんです」 ガタン、ゴトン、とリズムが近付いてくる。 興奮しきったを忍足が引き寄せた。 「先輩は何が創りたいですか?」 「俺? 俺は……」 ホームに入ってきた電車の扉が開く。 暖かい熱がそこから溢れ出た。 「雪うさぎ、かな……」 「可愛いですね! 私も大好きです!」 楽しみだと、彼女は笑いながら言った。 同意を示しながら電車に乗り込み、反対の扉に寄り掛かる。彼女は窓から雪を見ていた。 「積もるとええなぁ」 ぽつりと呟いて、自らも視線を外に向ける。 曇った灰色の街が、徐々に動き出した。 fin. |