最後に勝つのは、雑草だ。
花畑に咲く花は、あくまで集合の中の一。個として見られることはない。人は花壇を作るくせに、花壇からはみ出した一輪ばかりを気にかける。


(――そんなの、ずるい)


花壇に咲く花だって、誰かのための唯一の一輪になりたいとどこかで感じているのに。


(あ、)


授業中、窓の外を覗いてまた溜息を吐く。
金髪の少女を追う、赤髪。サボりの二人。あの金髪の少女は、学内でも有名な不良だ。
そして、赤髪の少年はやはり有名なテニス部員。


(花壇から外れた雑草か)


ほら、ね。
そんな風になんとなく授業を受ければ、チャイムが時間を区切っていた。
花壇の花は一斉に動き出す。放課後、各々の行くべき所へ。





花畑は、憎らしい程綺麗だ。
その花達を見下ろし、奥歯を噛み締めた。


「ねえ、」


突然聞こえた声に、私は勢いよく振り返る。
"彼"は、見慣れたユニフォームに身を包み、ラケットを肩に気怠そうに立っていた。


「そこのボール取ってくんない?」


私の足元を指差して、彼は言う。私は静かにそれを拾い、彼に差し出した。
彼はそれを受け取り、私越しに花壇をひょいと見た。


「花壇ってさ、理不尽っスよね」


私と同様に花壇を見下ろし、名前は忘れたがテニス部のルーキーは言葉を投げ掛ける。返事はしない、返事を欲しているとは思えなかったからだ。
暫く彼を見ていると、彼はおもむろにボールを花壇に叩き込んだ。


「ちょ……キミ!」


流石に私も、彼を止めようとして声を掛ける。


「俺は、嫌だ。こんな花壇の中で終わるのは!」


彼は花を踏みながら、私の腕を引いた。勢いで私も花壇へと足を踏み入れる。
足元で、花が潰れたのを感じた。


「共犯」


ニヤリと彼は笑い、私は呆れたように笑い返した。
ままよと私も花を踏み始める。
遠くから、先生の怒鳴り声がした。
その後散々二人で怒られたが、どこかスッキリしていた。

花壇では、一輪だけが凛と咲いている。
余談だが、彼の名前は切原赤也くんと言うらしい。





fin.
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