花は桜。
辺りを見上げれば、淡い桃色がふわりと遊ぶ。
優しい色だと、髪の色が派手な小さな少年は言いました。


「人、多いね」
「花見日和だからね」


桜も見ないで、騒ぐ人を眺めるに洋平は頬を膨らませた。
土手には桜が行儀よく並び、屋台も思い思いに匂いを振り撒いている。河原にはどこを見てもブルーシート。
なんとも、日本らしい光景だ。


「折角の花見なんだからさ!」
「桜なんて毎日見ているじゃないか」
「違うだろ!」


自分より背の高いに突っ掛かり、洋平は拗ねたように先を歩き出した。
申し訳なさそうに、もそれを追う。


「ごめん」
「別に!」
「ごめん、洋平」
「怒ってないし!」
「洋平……」


暫く素っ気なくするつもりだったが、の声色に思わず振り返る。
が俯いている。


「ああ、もう!」


頭をガシガシと掻いて、の腕を掴む。


「そんな所見たって、桜はないだろ!」


顔を覗き込んで、目を合わせればの視線はするりと逃げる。
その頬に自らのそれを軽く擦り寄せ、洋平はぼそりと呟いた。


「ムキになって、ごめん」


それから彼女の手を引いて歩き出す。


「あっ、」


が慌てて横に並ぶ。


「洋平、私な」


手を握り直し、顔を合わせないまま土手を進んだ。


「私、洋平がすきだ」
「い、今更なんだよ、改まって」
「なんとなく」


笑って、互いを見る。
世界は驚く位に、優しい色をしていた。




fin.
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