「いいな、サッカー」
「何がだ」
「サッカー出来て、いいなって」
「お前もやればいいだろう?」
「ううん。サッカー上手くて、認められる鬼道さんが羨ましいの」


何を言っているんだろう、私は。
鬼道さんの眉がピクリと動いた。ああ、カンに障ったんだ。


「違うよ、違う。そうじゃないの。無責任に羨んだわけじゃない」
「どうしたんだ、今日は」
「色々あったんだよ」
「まるで他人事だな」
「だったらいいんだけど」


社会は厳しいね、なんて言ったら鬼道さんは苦い顔をした。この人はそれをよく知っている。私なんかより、ずっと知っている。


「否定は嫌い、拒絶は怖い、私は臆病者」
「人間なら当然だな」
「じゃあ何故人間は否定するの。拒絶するの」
「それが人間だからだろう」


矛盾。不条理。理不尽。
そんな世間が嫌い。そんな世間で生きている。生きることは、とても息苦しい。


「私は贅沢者なのかな」
「場合によるな」
「違うよ、とか言ってくれたらいいのに」
「俺に嘘をつかれたいのか?」
「それは嫌」


ほらな、贅沢者め。
そう言って鬼道さんは、私の頭を撫でた。


「認めてやる」
「?」
「お前という存在は、俺が認める。俺が肯定してやる。だから、いい加減その顔をやめろ」
「変な顔してた?」
「今にも泣きそうだ」


私は小さく笑って見せた。





fin.
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